天童荒太『静人日記』

以前読んだ『悼む人』の生まれる元となった創作物。天童荒太氏が静人となり、行ってきた悼みを日記形式に綴っていたものなんだそう。物書きというのは、こうやって人物像を作り上げていくものなのだろうか?と考えさせられた1冊。タイトルにあるように日記なのでストーリー性は低い。どちらかというと1日単位での短編を読んでいるような気さえしてくる。しかも起承転結なんてない。どちらかというと事実が書いてあるだけで読み手からすれば退屈に感じてしまうのは否めなかった。それでも、ときどき、ぐっとくるエピソードがある。(これは人によって琴線に触れるエピソードはそれぞれだろう。)それが読みたいがためにどんどん読み進めていってしまった。気づけば、あっという間に終わってしまった。ああ・・・もっとじっくり読んでおけば良かった、と軽く後悔をしました。
前半は淡々と事実だけを伝えている事務的な記述だったものが、後半になるにつれどんどん感情が溢れはじめ色彩豊かに綴られていく。なぜなのか、静人の魅力が伝わってくるのが不思議。『悼む人』を読んでいた時は、静人のクールさが目立っていたのに、日記の中では多くの感情がはじけていることに気がつく。ラストは悼む人とリンクするのだろうかと期待しながら読んだが・・・でした。